情弱公務員

情けない話なのだが、私は昔から情報に疎い。

そのうえ、「人と同じ」をできるだけ避けてきたものだから、周囲から出遅れることもしばしば。

ガラケーからスマホに変えたのも友達界隈の中では遅めだった。

ただ、自分ではそれを出遅れているとは思っていない。

敢えてそれを選んでいるのだから。

それでも、やはりそんな性格なものだから損をすることもあるわけで。

最近痛感したことでいうと携帯の契約プラン。

私の契約プランはギガ制限のかかるものであった。

これまでは極力Wi-Fiを使用し、外出先では余計なネット接続をしないよう心がけてきたので、生活に大きな支障はきたしてこなかったのだが、今年度に入ってからは仕事や外出先での調べ物などでどうしてもネット回線を使用する頻度が増え、モロにダメージを受けるようになってきた。

それでも月を跨げばまた快適に過ごせるので、「月末だけの辛抱だ」と思ってやり過ごしてきたわけだが、やはりそういう小さなダメージも蓄積され続ければ大きなストレスになるものである。

 

スマホという文明の利器を使用していながら、なんでこんなに不便なんだ!)

 

いよいよ耐えられなくなった私は、すぐさま某携帯ショップへと駆け込んだ。

ギガ使い放題に切り替えたい旨をお姉さんに伝える。

今の契約プランとの料金の比較などを行ってもらった後、お姉さんはサラッと答えた。

「100円しか上がらないので、変えておくべきでしょう」

私は驚愕した。

100円!?

100円のためだけに私はこれまで自分を縛り続けてきたというのか!?

とんだドMじゃないか!

恥ずかしさと情けなさも相まって、すぐさま手続きを進めるよう依頼した。

そこでふと、嫌な予感が脳裏をよぎった。

 

(他にも無駄な引き去りがあるんじゃないか…?)

 

その流れでお姉さんに、今自分が引き落とされている内容を調べてもらうことにした。

するとどうだろう。

◯◯保険だとか◯◯セキュリティだとか、正体不明の引き去りが課されていることが発覚したのだ。

お姉さんは言う。

「え、全然いらないですねこれ」

まさか店側からそんな言葉が返ってくるとは思いもよらなかった。

そして軽蔑とも取れるその声色。

100円の1件に留まらず、数年もの間、無駄な支払いを続けるといった、ドMさに拍車をかけるこの事実。

流石の私も黙ってはいられない。

情弱ドM公務員のレッテルを貼られたままで引き下がれるか。

取り戻さねば、私の名誉を…!

お姉さん、落ち着いて聞いてほしい。

これは前回契約時に担当だったお姉さんから言われるがままにやっただけなんだ。

私はあの時の言葉を忘れていない。

「雪島さまにとって一番無駄のないプランを」

笑顔でそう言ってくれたじゃないか。

営業時間ギリギリに電話をかけたにも関わらず、「多少時間が過ぎても良いので今から来店されるなら対応させていただきますよ」と優しく手を差し伸べてくれたじゃないか。

あれは…幻?

私の心はうっすらと涙を浮かべ始めていた。

人の言葉を鵜呑みにしてはいけない。

高い勉強代だったと思うんだ。

私は歯を食いしばり、目の前のお姉さんに見守られながら、あらゆる解約手続きを行ったのである。